Ara勉強会と言いつつ
Ara勉強会 というものを目にした勢いで申し込んでしまったので行ってきました。
Project Araっつのは、Googleによる組み合わせ自由な携帯電話をつくろうっていう計画っす。
Project Ara: Part of it - YouTube
おもちゃみたいな部品を Uniproって端子でくっつけて組み合わせて使うっていう、レゴみたいな感じで自分好みの携帯が作れるっていうのでものすごく面白そうなわけです。中二心というより、秘密基地作っちゃうぞっていう小ニ心、そういやちょうどうちの子がその歳ですがレゴでいろいろからくりを作るのに苦心してる、そんなところにスマッシュヒットするわけです。ほんとにそんなにうまくいくのかよ、というのに疑問を持ちつつも興味を持っていました。
あと、一応仕事的には、Araの謳い文句として「60億人のための携帯」とか言ってるわけです。発展途上国向けの教育をやっている Quipperとしては、やはりこれはチェックしておかなければなるまい、という後付の理由もあります。まあ、これは聞いてみた結果、ちょっとどうかなあ、というのもあるのですが、そこはあとで書きます。
勉強会は 4つの講演 + 懇親会という成り立ちで、それぞれに考えたことがあったので、章を分けてだらだら書かせていただきます。それぞれ興味が有るところをお読みいただければ幸いです。
「PROJECT ARAとものづくりの未来」丸山不二夫
まず、Project ARAの立ち位置、ビジョン、社会的役割みたいな話です。ポジショントーク的な「ARAすごいぜ」って話が多くなります。
ARAっつーのは、「現在の携帯が向かっている、統合された SoC 的なアプローチを少しバラして、エンドユーザにも組み合わせをいじれるようにしよう」というのが、私のような組み込み出身技術者には最もしっくり来る説明でした。つまり、大量生産の SoCで、すべての人が同じ組み合わせを使うようでは、新しい技術 (特に狙いとしては世界とコミュニケーションするためのセンサとか) が入る余地がない。そこをバラすことで技術の革新を進められるのでは、ということだと理解しました。
とはいうものの、ARAは一般ウケするようにか投資家向けにかいろんな顔をもっていて、それぞれの人向けのプロジェクトの理解の仕方を許してる気がします。ファッショナブルな自分好みの携帯を作れるよ、っていう側面もあるし、まだスマフォ持っていない人向けにカスタマイザブルな安い携帯もつくれるよ、っていう社会開発的なストーリーもあります。そういうのがまとまって同床異夢してたりするのが Project ARA (というか今晩の勉強会) のようです。
で、正直まだまとめ方にARA、もとい粗があるな、というのが感想です。
特に、デバイスの民主化って話がよくあったのですが、やっぱりこんなのが起きるのは金持ちの国だけだと思います。発展途上国にはまだ民主化は早いのです。というと語弊がありますが、組み合わせの自由より、まずまともにそこそこ使えるデバイスです。同じものを大量生産したほうが安くて品質のいいものが作れるのです。アラブの春の後には梅雨が来るのです。アラブに梅雨はなさそうですが。というわけで、60億人のためのデバイスというのは眉唾だと思います。同じく Googleの Android ONEの方が可能性があると思います。
で、製造業が Makerのムーブメントで復活する、というようなアオリもあった気がしますが、多分、その結果は「復活」というようなものとは違うような気がします。少なくとも、高度成長期みたいにみんなに恩恵が行き渡る、というようなものではない気がします。地方でも力のあるところはそこそこ生き残っていけたりするのかもしれませんが、それは少量生産の好事家たちのものでしょう。東北大学が 試作コインランドリーっていう MEMSの開発ラインを一般開放してるという話はすこし wktkしたけど、やはりそれを使いこなす能力のある人だけですし。
というわけで、製造業が復活するというより、日本の製造業が洗脳社会のニーズに合わせて生き残るべくあがいてニッチを見つけつつある、というのが正しい気がしました。いわゆる、おじさんたちが言う意味での「ものづくり」とは違うと思います。
まあ、そういうわけで両手を上げて賛成といわずとも、いろいろ考えるネタのある話ではありました。
「ARAモジュール間インターフェースUNIPROについて 」 永井 健一
ガチ技術の話です。こういう低レベルの話からはしばらく遠ざかっていたんですが、結構面白く聞けました。
現在の UniProは 12本端子で、8本が上下2リンクずつの平衡伝送になってて、1リンクあたり 4.6Gb/sとか。バスじゃなくて UniPro switchとの P2Pになってると。LCDもこれ経由で接続することになるので 60fpsだせるのか心配になったりとか。将来は非接触の inductiveにしてやるとか。
Linuxにも少しずつ実装ができてきて Greybus というプロトコルスタックができつつあると。その上に I2Cや USBを載せることもできるらしい。
まあ、ここらへんは多分いじる暇はないだろうなあ、と思いつつも面白かったです。
「METAMORPHOSYSでできること」 佐々木陽
プロトコルができても実際に ARAのモジュールを作るのはどうするのか、というのに対する回答が METAMORPHOSYSのようです。
ここらへんは素人なんですが、いろいろモジュールを組み合わせて回路を起こして、それをレイアウトして、熱のシミュレーションをやって、さらに見積もりまでしてくれちゃうシステムらしい。それをマニュファクチャーにオンラインで発注するシステムまでつくってしまって、モジュールづくりを一気に民主化しようという意図を感じました。
でも、本体は Windows上でうごいているので、なつかしい組み込み開発環境を思い出しました。統合環境と言いつつ使いにくくて、結局は makeないのかなあ、とか探すやつです。
民主化とか言うなら、開発環境の民主化もしなきゃイカンだろ、というのをちょっと感じました。これは JavaScriptと Androidの開発の違いのようなものです。
Androidは、Googleが頑張って Eclipse上の ADTとか emulatorとか一式開発しましたが、あまり使い勝手のいいもんじゃありませんでした。最近では Android Studioで改善してきたけど、これは build systemを gradleに出して民主化した、という影響もあると思います。
それに対して JavaScriptの開発環境なんて、長い間あってなきが如しでした。Script kiddy用の言語と馬鹿にされてきました。でも、nodeやら phantom.jsやら coffeescriptやら (そしてそれを影で支える Githubやら) がそれぞれバラバラに開発されニッチを競い合って、それこそ民主的に無駄も多く進化してきたわけです。馬鹿にしてた開発環境が劇的に進化する様を見てしまったのです。
というわけで Metamorphosysはすごいけど、機能面でひと通り揃った開発環境を用意しただけで物事がうまく転がると思うなよ、という感じです。民主憲法を押し付けたからって民主的に国が発展するわけじゃないんだからな。日本は発展しちゃったけど。
「3Dプリンター、過去、現在、そして少し先の未来」 原 雄司
ARAと一番関係ない話でした。それだけに雑学的に楽しめました。
Perfumeやマツコ・デラックスをスキャンした話とか、水族館で自分の描いた魚が泳ぐのを見て、チームラボかと思ったらライゾマティクスだったりとか。
一番びっくりしたのは 3Dプリンタで導電性の部分も一緒に作って、回路まで同時に作っちゃうとか。
まあ、最初の話の、製造業の民主化のはなしの具体例みたいなことですが、事例が面白かったです。
懇親会
さほど書くこともないっす。久々に A社で一緒に仕事をしてたすずきさんにあったぐらいでしょうか。お元気そうで何よりでした。
まとめ
まとめとしては、今の仕事に直接役立ちそうにないけど楽しめました。
うーん、でも ARAの教育用モジュールとかできないかな。三角定規モジュールとか。そういうニッチにもいけるのが ARAのいいところだよなあ。